お食い初めとは
お食い初め(おくいぞめ)とは、生後100日目、つまり歯が生え始める頃の赤ちゃんの行事で、赤ちゃんがこの先一生食べ物に困らないようにという願いをこめて食べ物を食べさせる儀式です。また、歯が生えるくらいに成長したことを祝う意味もあります。地域によっては100日目でなく、110日目や120日目とするところもあるようですが、いずれも目安であり、ご家庭の都合に合わせて行ってよいでしょう。
お食い初めには色々な呼び名があり、「食べ始め」、「真魚始め(まなはじめ)」、箸を始めて使うという意味で「箸揃え」、「箸始め」、また時期が生後100日目頃であることから「百日の祝い(ももかのいわい)」、「歯がため」と呼ぶ地域もあります。
お食い初めのやり方
前述したように、お食い初めは赤ちゃんに食べ物を食べさせるわけですが、どのような献立をどのように食べさせるかをご紹介します。
伝統に従った正式な献立は、一汁三菜の祝い膳で、内容は以下のようになっています。
1.鯛などの尾頭(おかしら)つきの焼き魚(地域によっては鯛でなく違う魚)
2.赤飯(地域によっては白ご飯、もしくは両方)
3.煮物
4.香の物
5.吸い物(すまし汁)
これらの食べ物と一緒に、丈夫な歯が生えることを願って、いくつかの小石を「歯固めの小石」として小皿に入れてお膳に乗せます。
この小石は古いしきたりでは、地元の神社(氏神)の境内から拾ってきて、儀式終了の後には境内へ納めるとされていますが、河原や海辺(つまり水辺)の石を拾ってきて使ったり、小石の代わりに硬い栗の実を使う地域もあります。また、しわがたくさんできるまで長生きするようにという願いを込めて、梅干を添える地域もあります。この手の行事は本当に地域ごとに独特の風習がたくさんあります。
なお、二の膳に紅白の餅を五つ添えると、さらに本格的な祝い膳となります。
この献立を本当に赤ちゃんに食べさせるわけではありません。この時期の赤ちゃんはようやく離乳食になるかどうか、という時期ですのでまだこれらを食べることはできません。「養い親」役の人が箸で食べさせるフリをするだけです。
「養い親」は、かつては長寿にあやかるという意味で親族の長寿の方にお願いしていたようですが、現在ではおじいちゃんかおばあちゃんにお願いするケースが多いようです。もちろんパパやママがその役をしてもまったく問題ありません。基本的に男の子には男性、女の子には女性の養い親を頼みます。
では、養い親が赤ちゃんに食べさせるフリをする、正式な手順をご紹介します。
まず、食べさせる(フリをする)順番は、「ご飯、汁、ご飯、魚、ご飯」で、これを3回繰り返します。また、このとき食べ物を箸で取って食べさせるフリをした後に、箸を小石に触れさせ、その箸を赤ちゃんの歯茎にあてて、「丈夫な歯が生えますように」と願をかけましょう。
基本的には食べるマネをさせるだけですが、「ひとつぶなめ」といってご飯一粒は食べさせるようにします。
以上は、伝統的なお食い初めですが、現代ではもっと簡略化したお食い初めを行う家庭が多いようです。例えば、祝い膳として離乳食と野菜スープなど、赤ちゃんが食べられそうなものを用意し、それを少し食べさせて、母乳やミルクばかりの食事から、離乳食への切り替えのきっかけとする、などです。
お食い初めに用意するもの
ご飯や料理の材料以外で、お食い初めに必要なものをご紹介します。
正式な祝い膳をしつらえる場合、箸は柳の白木で食器には漆器を用います。また料理を載せるお膳か高足も必要です。これらのお膳はママ方の実家から贈られるのが一般的です。
しかし現在、これらのお膳セットがあっても使う機会はめったになく、わざわざこの儀式のために用意するケースは少なくなってきているようです。
出産祝いなどでベビー用食器セットをもらっていれば、漆器のお椀の代わりにベビー用食器を、お膳の代わりにベビーラックなどを代用すると実用的です。
また、歯固めの石を使う場合は、事前に用意しておかなければなりません。神社で拾うのか水辺で拾うのかなど、地域の風習などをご両親に相談してみたらよいでしょう。
赤ちゃんの服装ですが、特にこれと決まってはいませんが、地域によっては普段白い産着ばかりだった赤ちゃんにカラフルな服を着せて祝う「お色直し」という儀式を同時に行うところもあります。
また、祝い膳一式をママ側の実家が贈るという慣わしは、現在でも残っていますが、今はベビー用食器セットを贈るケースの方が多いようです。ただし、すでに出産祝いなどでもらっていることがありますので、その辺はお互いに相談して決めましょう。